どっちを信じる?『神が描くは曲線で』ネタバレ感想・考察/Los renglones torcidos de Dios (2022)
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どーも、人を騙せない丸山です。 今回は『神が描くは曲線で』です。
『神が描くは曲線で』は本が原作のNetflixオリジナル映画です。早速Netflixでは人気上位に入っていますね。劇場公開作並のクオリティなのでミステリー好きには鉄板な作品です。
この映画は何ですか?
「騙され系」です。
患者エンドと探偵エンド。どちらで騙されましたか?
あらすじは?
自ら精神病院に入院する女性。
彼女は探偵として潜入調査をしに来たのですが、
何か約束と違う。
重症患者として拘束されてしまうのです。
彼女は目的を果たせるのでしょうか?
黒幕は一体誰なのでしょうか?
みどころは?
時間を感じさせない
この映画はなんと、
2時間半
もあるんです。長すぎる。
こんなに長くても許されるのはアベンジャーズだけと決まっています。
観始めるのに少しだけ抵抗感がありましたが、
観始めたら全く気にならず最後までノンストップ鑑賞。
しかも、連続で3回も観てしまいました。
えっ 7時間半も観ていたの?( ゚д゚)ポカーン
技巧的な映像編集
観始めて少し経つと夜間の雨のシーンが繰り返し挿入されます。
最初はこのシーンの意味が分かりませんが、
後半で起こる出来事が断片的に前半に折り込まれています。
境目がなく自然に差し込まれるため、
時系列がミックスされている事を感じさせません。
この不自然さに気づけるのは2回目以降の視聴時になると思います。
後半で映るのと全く同じシーンが使われている箇所や、
後半のシーンとは微妙に異なる場面が使われていたり、
全く同じシーンが2回使われているのに、セリフの意味が全く別の意味になるような演出がされているなど、
繰り返し観たくなるような映像トリックが楽しめます。
肝になるのは見えない人
主人公の計画を支える人物は二人います。
医師と依頼者です。
ラストのオチをどのように理解するか?
ここがこの映画の最大の魅力と言ってよいでしょう。
医師が来た説
連絡の取れなかった医師がようやくやってきた。
院長の言葉通りに信じると、この映画の印象は、
主人公はやはり精神病患者だったのだ。
という事になります。
僕は初回鑑賞時はすっかり騙されました。
しかし繰り返し観ていくと、
どうもそうではないような気がしてきます。
医師とは初対面説
院長の最後の言葉をそのまま信じる必要はありません。
主人公の立場を維持して見た場合、
やってきたのは医師ではなく、
主人公の思っている通り、
依頼者のデルオルモがやってきたと解釈する事もできます。
この場合は主人公の知っている通りの事が起きていた事になり、
なおかつ夫の陰謀にはめられていたという事になります。
主人公の視線
医師だと自称する人物の登場により、
彼を見つめていた主人公の目線が、
カメラ目線に切り替わった所で映画は終わります。
この視線の意味も二通りになります。
- 私やっちゃったんだわ、という患者エンド
- 私を信じて、と観客に訴える探偵エンド
僕の場合はうっかり患者エンドを信じてしまいましたが、
繰り返し視聴するとどうも探偵エンドに思えてしまうのです。
探偵エンドの証拠
素直な気持ちで観てしまうと院長と医師に騙され、
患者エンドで観てしまうのではないでしょうか。
しかし、本作には冒頭から後半まで、
主人公が正常である事を思わせる要素がいくつも登場しています。
手紙
患者は必ず答えを出します
といった内容の手紙が病院宛に書かれていますが、
これは主人公が自分で書いたものです。
病院宛に医師が書いた手紙の内容を主人公が知っているはずはなく、
その内容を知っている事が彼女が正常である証拠だと自ら述べています。
お金は消えている
病院外で確認されているためこれは間違いなく事実なのですが、
夫は妻の預金を全て引き出して、どこかに消えてしまったようです。
家はしばらく人が住んでいないようだとの事。
入院費は通常の20倍が支払われました。
つまり、妻が当分戻って来る事がないように支払いを済ませた夫は妻の資産を自分の物にして失踪したと考えられます。
この点は夫が妻を「調査のために入院した」と思わせて、実は病院に閉じ込める陰謀にはめられたという主人公の認識とぴったりハマります。
毒殺されそうになったんだからそれぐらいしてもおかしくないんじゃね?
という指摘も可能ですが、それならば警察沙汰にすればよかったでしょう。
医師の診断による入院にして警察沙汰にしなかったのは、夫の目当てがお金だったと考えられます。
医師=ドナディオの顔を知らない?
主人公は、依頼者デルオルモとの会話を何度も思い出します。
しかし医師との記憶については夫とのやり取りを離れた所から見ているだけで、
顔を見た描写がありません。
医師の顔を知らないのであれば、
夫と共謀した医師が「自分はデルオルモだ」と偽装して妻に調査を依頼する事が可能になります。
本物のデルオルモは病院で主人公とお互いに「初顔合わせ」だと分かっています。
つまり、妻の知る依頼者は偽物である事が確定しています。
となれば、妻の知る依頼者は、実際には医師である事は間違いないのでしょう。
問題となるのは、主人公が正常か異常かという点であり、
単なる治療のための入院なのか、
もしくは
正常な妻を夫が医師と共謀して病院送りにしたのか
という点です。
重要な仮定
主人公が正常である事を裏付ける映像シーンは、
全てが事実であり主人公の想像が含まれていない事が重要です。
想像が入っていては推理が成り立ちません。
そこで、彼女の記憶は全て想像ではなく事実であると仮定して観ていくことになります。
しかし、事実なのか不明なシーンがあります。
それは院長の想像です。
院長は主人公の犯行だという推理を展開しますが、
その際に主人公の行動が描写されています。
これらのシーンは主人公の記憶ではなく、院長の推理です。
その点から、これらは実際には起きていない院長の想像である、
もしくは
映像は実際に起きた出来事であるが、筋書きだけは院長の想像である、
このいずれかと考えられます。
そのように解釈すれば主人公が正常であるという推理を妨げる事はないでしょう。
最終的に、最後に登場した男が医師である事を疑う必要はなく、
主人公のカメラ目線の意味は、下記のいずれかになるだろうと思います。
- 私は正常ではなかったのだ。視聴者ごめんテヘペロ!
- 依頼者だと思っていた男は医師だった。夫に騙された。視聴者信じて!
結論まとめ
結末の解釈は二通りあります。
1.観客が最初から最後まで騙されていた
主人公が正常だと思って観ていた視聴者にとっては、
2時間半もの間、ずっと騙されていたことが最後の数秒で明らかになる、
というパターンです。
こちらを第一印象と感じるのがクリエイターの狙い通りなのではないかと思います。
2.夫の陰謀にハメられた
こちらが僕の推す説です。
主人公は正常であり、最後に「デルオルモだと思っていた人物がドナディオだった」という、
主人公が知らなかった新事実が出てきて終幕となるパターンです。
主人公の認識は最後まで全て正しく、
最後に主人公の知らなかった事実が出てきて困惑するという結末だった事になります。
入院までに妻の知らなかった要素を列挙すると、
- 依頼者デルオルモは実はドナディオだった
- 医師ドナディオの顔は知らなかったから騙された
- 夫には陰謀があった
- 夫とドナディオがグルだった
- デルオルモの調査依頼は嘘だった
という感じで、一言でまとめると
探偵として調査に来たつもりが夫にはめられて退院できなくなり財産も奪われた
というのがメインのオチであり、
最後の最後に投入された究極の隠しネタが
依頼者デルオルモは実はドナディオだった
という物語になっていたのです。
解釈はお好みで
どちらのパターンを信じるかの自由度が高いのが本作の素晴らしいところです。
騙された!と思うのもヨシ
俺は騙されないぞ!と思うのもヨシ
それこそ上質なミステリー作品と言えるのではないでしょうか。
視聴者それぞれの結末があるのがこの手の映画の楽しみ方の一つだと思います。
あなたはどちらだと思いましたか?
評価の理由
本が原作ではあるものの、Netflixオリジナルとしては規格外に上質なミステリー作品です。
難解な映像トリックも駆使され、繰り返し観ると新たな発見があります。
映画館で1800円を払う価値のあるNetflixオリジナル映画はなかなかありません。
本作は稀に見る名作と言えるでしょう。
どこで観れますか?
Netflixオリジナルなので、Netflixでどうぞ。
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